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ペースメーカー関連の医療相談

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最終更新日 06/23/04

正常な心臓の発電と中継のしくみ

刺激伝導系心臓はふつう1日に約10万回前後、収縮と拡張を交互に繰り返し拍動していますが、このリズムは、右の図にある洞結節(どうけっせつ)から発生する電気刺激により作られます。

洞結節が心臓の発電所(ペースメーカー)となり、電線に相当する伝導路を通り心房全体に興奮が伝わり、心房を収縮させ、心房に溜まった血液を心室に送血します。次に房室結節(ぼうしつけっせつ)という心房と心室の電気の中継をするいわば中継所を経由して、心室に電気が至ります。

心室ではヒス束という1本の電線を経由し、右脚左脚の太い電線に別れた後、引き込み線にあたるプルキンエ線維を通り、配電の最終目的である各家庭に相当する心室の心筋細胞全てが興奮し、左右の心室の収縮により全身と肺に送血します。以上により心臓は体に必要な脈拍数を作り、補助ポンプの役割の心房と全身と肺に血液を送るポンプの心室が1心拍毎に協調して無駄なく働き全身に血液を送り出しています。

 発電所の異常(洞不全症候群)

ふつう洞結節以下の経路の殆どすべての場所で、バックアップ(予備)の発電能力をもち、万が一洞結節が停止しても、分速は遅くはなりますが、バックアップの発電所(ペースメーカー)が作動し、心臓がとまらない安全な仕組みになっています。したがって心臓が長く停止したり、極端な徐脈が生じるのは、洞結節のみならず、予備の発電能力まで障害が及んでいる事が多い訳です(洞不全症候群)。

 中継所の異常(房室ブロック)

また心房と心室間の電気の中継所(房室結節)は、正常でも心房側のスピードが一定以上速ければ、心室へのブロック(房室ブロック)が起こり、例えば4回に3回しか心房から心室へ伝わらなくなると、毎分160回の心房の興奮が、心室に伝わるのは毎分120回となり、暴走する発電所から心臓を守る変電所の役目も果たします。

しかし、房室結節やそれに続くヒス束に何らかの原因で障害が起きると、普通の心房側のスピードでもブロックが生じ、例えば2回に1回しか心房から心室へ伝わらなくなると、毎分60回の心房の興奮が、心室に伝わるのは毎分30回となり、高度の徐脈を生じます。重症になると心房の電気が全く伝わらなくなり(完全房室ブロック)、心室のバックアップの発電所(ペースメーカー)が上手く働かないと生命に危険を生じる事もあります。

この様に心臓の電気系統で発電の異常、伝導中継の異常が生じると脈が飛ぶ、脈がかける、脈が速くなる、脈が遅くなるといった不整脈が発生します。不整脈の多くは治療の不要のことが多いのですが、中には放置すると危険なものもあり、専門医の診断が必要になります。

 ペースメーカーが必要になる時

1)徐脈

ペースメーカーが必要になる不整脈のおもな病気は徐脈を来す状態で、一分間の脈拍数が30台になったり、長い間(5秒前後以上)心臓が止まったりすると、運動能力が落ちて息切れが起こったり、脳に必要な血液量を送れなくなり、頭がボーっとしたり、意識を失うことまであります。つまり、生命にすぐ危険が及ぶ場合や、その脈拍で脳や心臓などの重要臓器の障害から活動能力が低下する様な場合です。徐脈の電気的原因としては先に述べたように

  • 洞不全症候群:発電所(洞結節)の働きが低下し必要な脈拍数をつくることができなくなる。
  • 房室ブロック:中継所(房室結節)の働きが低下し必要な脈拍を心房から心室に伝えられなくなる。
  • 頻脈性の不整脈発作や他の心臓病のための治療薬投与やアブレーションなどの処置が避けられず、治療による徐脈の悪化をきたしたり、徐脈の悪化が十分予想される場合。

などが代表的です。

2)心機能の改善

最近では左脚ブロックなどの心室内の伝導障害と、心機能の重度障害の合併例で、右室と冠静脈経由で左心室を心房に同期して生理的ペーシング(両室ペーシング)することにより、心房と心室、右室と心室の収縮のタイミングをコントロールして心機能を改善する治療もなされています。

 ペースメーカーとは

右の図のようにペースメーカーは本体は電池と刺激発生、感知回路からできていますが、右心房や右心室、あるいは両方に留置された刺激を伝えたり、心電図を伝えるためのリード(導線)からなる小さな人工臓器で、働きが低下した洞結節や房室結節などの伝導路の代わりに電気刺激を心筋に作ったり伝えたりして、体に必要な脈拍を作り出しています。

 

重さ約23.9g 45.7x43.8x6.9mm 寿命9.9年ペースメーカーの開発、進歩

1930年代から試作が始まり、1957年には体外に付けるペースメーカーが開発され、1960年には皮膚の下に装着する(植え込み式)ペースメーカーが初めて使用されました。その後は急速に技術が進歩したことにより、どんどん小型軽量化し、機能も高度化したペースメーカーが開発されています。ペースメーカー開発の歴史の詳細はここをクリックしてください。

現在では、20〜60g程度の軽量なものが標準となりほとんど生活に不便を感じない程度になっています。初期のペースメーカーは決まった回数だけ刺激する固定型でしたが、現在はデマンド型といって脈拍が少なくなったときにだけ刺激するタイプが主流です。また、心房から心室へとペーシングの順序と連携が正常人に極めて近い方式の生理的ペーシングや、さらに体動、心電図波形、呼吸、体温などを感知し、運動時に脈拍が増えるようにプログラムされたレートレスポンス(心拍応答型)といったより自然に近い機能をもつペースメーカーが普及しています。

右上の写真の某社のペースメーカーを例にとると、レートレスポンス機能など現在では標準的な機能付で、本体のサイズは45.7x43.8x6.9mmで重量23.9gです。

H14年の推計では日本全国で約30〜40万人にペースメーカーが埋め込まれており、最近では毎年約4万台を超えるペースでペースメーカーが埋め込まれています。

 

ペースメーカーの機能と種類

ペースメーカーの機能、種類についての通常バージョンはこちら

ペースメーカーの機能、種類についてのFlashバージョンはこちら

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当科でのペースメーカの植込み手術(成人)について

1)初回の手術の場合

まず、手術中の安全確保のため足の付け根などの静脈から一時的な体外ペーシングのカテーテルを右心室に留置します。

次に、左または右の鎖骨近辺の皮膚を消毒します。局所麻酔剤を皮下に十分注射し、鎖骨の少し下にペースメーカーの大きさに応じて数cm程度の切開後、皮下にペースメーカーサイズのポケットをつくります。

その後鎖骨の下にある静脈から1本ないし必要があれば2本のリード(電極)を心臓の目的の位置に挿入し、電気的にリードが正しい位置にあるかのチェックの後、深呼吸や咳をしていただいて、リード先端の安定度もチェックと、電圧を上げても不快な症状が起きないかどうかを確認し、問題なければリードを糸で固定したのち、ペースメーカーとつなぎ皮下のポケットにおさめます。

切開部位を皮下で縫いあわせ、消毒し後日抜糸が不要なテープを皮膚表面に貼りガーゼを当てて終了です。場合により最適のリードの位置を決定するのに時間がかかることがありますが、普通1ないし2時間程度で手術は終了です。

術後1週間前後はペースメーカーの入れた側の腕を固定して、リードがずれるのを防ぎます。1週間前後で皮膚のテープをはがし、体外から測定器を使用し、リードやペースメーカー本体のチェックをし、必要があれば最適な条件に心拍数などを調節し、24時間心電図や心電図モニターでペースメーカーの動作状態を最終チェックします。

2)2回目以降の手術の場合。

ペースメーカーの入った皮膚の切開までは初回と同じです。前回のリードの検査で問題がなければ、新しいペースメーカー本体を以前のポケットに入れ、切開部位を縫いあわせ、消毒後ガーゼを当てて終了です。1時間前後で終わります。術後も腕の長期固定はありません。リードの交換が必要な時は普通は反対側から初回の手術と同様の順序で植込みます。

ペースメーカー植え込み手術に伴う合併症

局所麻酔下の手術であり比較的安全な方ではありますが、全くリスクがないわけではありませんので主な合併症を列挙します。その頻度は極めて稀、稀、時々などで表しています。

手術中に発生する合併症

  • 極めて稀にリードを挿入するルートの組織や臓器を損傷することがありますが(血腫、気胸、心タンポナーデなど)大事に至ることも稀です。
  • 時々手術の痛みや緊張により吐き気や嘔吐などの症状を呈して軽いショックをおこされる方が特に高齢者でおられますが、大概は術中の処置により治ります。
  • しばしば術中リードの挿入にともない不整脈が出現することがしばしばありますが大部分が一過性で後遺症を生じることは極めて稀です。リードの操作で徐脈が誘発される可能性のある方には前もって一時的ペーシングを行なってから手術します。
  • 極めて稀に局所麻酔薬や時に使用する造影剤へのアレルギーが生じることがあり、それらに対処する薬品などを準備しています。

手術後の合併症

  • 稀にリードの先端の移動によりペーシングがきちんと行われなくなることがあり、時に危険な心室性の不整脈をともなうこともあります。再度創口を開いてリード位置の調整のため再手術の必要があります。
  • 時々ペースメーカー植込み部位の出血による血腫を生じることがありますが出血は大概は自然に吸収され大事に至ることは極めて稀です。
  • 植え込み後リード周囲に静脈血栓症を生じて上肢がむくむことがありますがこれも極めて稀です。
  • 極めて稀にペースメーカー植込み部位の感染がありますが、一度感染を起こすとペースメーカーやリードは除去せざるを得ないことが多く一番重篤な合併症です。従って創が落ち着くまで術後に感染予防のための抗生剤を投与します。
  • 植え込んだ側の上肢をしばらく固定するので、特に高齢者では固定解除後時々肩痛や肩の可動範囲が狭まることがありますが自然に回復するのが普通です。
  • 稀にペースメーカー症候群といって植込み後に動悸や体調の不良を生じることがありますが多くは一過性です。
  • 極めて稀にペースメーカー植込み部位の皮膚が圧迫による壊死を生じ、再手術により壊死部分を取り除いたり、ペースメーカーを皮下でなく筋肉の下に移動せざるを得ないことがあります。
  • 極めて稀にペースメーカー刺激に同期したペースメーカー本体の周囲の筋肉や横隔膜の収縮が生じる場合があります。
  • 稀にリードの断線、被覆の劣化、リードと本体の接続不良、リード先端の抵抗値の上昇などが生じてリードの機能に支障をきたし再手術を要することがあります。
  • 術後の感染予防の抗生剤による副作用を生じる可能性があります。
  • ペースメーカーの種類によっては心房粗細動などによりペースメーカー頻拍を生じることもあります。
  • ペーシングのモードとペーシングの頻度によっては心臓機能に支障を生じ心不全を生じるリスクが高まることも報告されています。
  • 洞不全症候群ではペースメーカー植え込み後に若干脳卒中のリスクが高まるとの報告があります。

ペースメーカーやリードの製造過程での不良

  • 本体やリードの製造工程での欠陥が植え込み後に明らかになり、交換を余儀なくされる可能性が極めて稀ですがあります。

日常生活での電磁波に関する注意

ペースメーカーは強力な磁石や磁気などによる電磁波の影響をうけますので、以下のことにご注意ください。

また病院にて検査、治療をお受けになる際はペースメーカーを装着している旨を、お申し出ください。

強い電磁波、電気を発生するので、絶対避けるべき場所、機器

電磁波を発生する場所

誘導型溶鉱炉、発電施設、レーダー基地、テレビやラジオ等の送信塔、高圧電線の下、エンジンをかけた車のボンネット内、核磁気共鳴検査装置(MRI、MRA)など

体に通電または強い電波を発生する機器

電気風呂、肩こり治療器などの低周波治療器、高周波治療器、医療用電気治療器、磁器マット、全自動麻雀卓、各種溶接器など

漏電している電気製品

感電により、本体が故障することあり

弱い電磁波を発生するので、注意を要する場所、機器

磁石

磁石をペースメーカー本体の上に当てないこと。磁気ネックレスも同様。はなせば影響しなくなる。

携帯電話等

携帯電話は本体から22cm以上離して使用。ポータブル、車載型の場合はアンテナ部位と本体を30cm以上離す。

その他の無線(アマチュア無線、タクシー等の業務用無線など)では出力によりアンテナとの安全な距離のガイドラインがあるが、アンテナの指向性によってはより短い距離でも影響があるので注意。3ワットで約30cm、25ワットで約90cm、200ワットで約3m以内に近づかないこと。

日本医用機器工業会 ペースメーカ協議会のガイドライン

1997年のNew England Journal of Medicineの研究記事

電子レンジ等の電磁調理器、IHジャー

本体を故意に近づけないこと

商店に設置されている盗難防止装置の一部、外国の空港などでの金属探知機の一部

立ち止まらないこと

使用しても心配のない機器

電気製品

テレビ、ラジオ、ステレオ、ビデオ、レーザーディスク、トースター、ミキサー、レンジ、ホットプレート、電気コタツ、掃除機、洗濯機、電気カーペット、電気毛布、タイプライター、コンピューター、ワープロ、コピー機、ファックス、補聴器。ただしアースが必要なものはアースを使用のこと。また頻回に電源スイッチを入れたり、切ったりしないこと。

乗り物など

自動車、草刈り機、スノーモービル、モータボート

医療検査機器

レントゲン写真、CT検査、超音波検査、心電図検査

脈と手術部位のチェックをしましょう

  • 毎日脈をとる(検脈)ようにしましょう。入院中に検脈を指導します。自分の脈が最低毎分いくつにセットされているかを担当医から確認しましょう。ただしセットした値から毎分数回少なくても慌てることはありません、数え方や、脈の状態によります。ペースメーカー外来にて正確な脈拍数をチェックしてもらいましょう。
  • ペースメーカ植込み部位の皮膚の色を時々みましょう。一部皮膚の色が変わったりした場合はすぐに担当医に診察してもらいましょう。

 

ペースメーカーと予後に関する最新医学情報 

タイトル
結果

正常QRS幅の洞不全症候群での右室ペーシングによる心不全と心房細動の発生(Circulation 2003; 107:2932-2937)

DDDR群で累積心室ペーシング率が40%超の場合には40%未満に比し心不全入院のリスクが3倍、VVIR群では累積心室ペーシング率が80%超になると心不全入院リスクは2.5倍に増加した。また両群で累積心室ペーシング率が80〜85%となると心房細動リスクが増加した。

洞結節機能不全に対する心室ペーシングまたは房室ペーシング(N Engl J Med 2002; 346 : 1854 - 62)

洞結節機能不全において、生理的ペーシングは、心室ペーシングに比べ、脳卒中を含めた生存率を改善しない。しかし、房室ペーシングは心房性細動のリスク(約20%改善)、および心不全を減らし、「生活の自由度」(QOL) をわずかに改善する。

生理的ペーシング(心房と心室の2箇所での同期ペーシング)と心室ペーシングでの脳卒中発症率の差(N Engl J Med 2000;342:1385-91.)

ペーシング方法の違いによる脳卒中の発症率に差は見られなかった(Webmaster注釈:ペースメーカー植え込みにより脳卒中の発生率が若干増えるとされている)。

心房ペーシング(Circulation 1998;98:1315-21)での房室ブロック発生率

房室伝導が正常の心房ペーシングの患者を約5.5年追跡したがわずか年率0.6%の房室ブロックが出現したのみであり、心房ペーシングは安全と考えられた。

ペースメーカーに関するリンク

日本メドトロニック株式会社

生活の注意、費用、日本ペースメーカー友の会の連絡先を含め詳細な解説

ゲッツブラザーズCo. LTD

ペースメーカーを植え込んだ患者の方々からの質問に対する回答

英国政府の医療機器情報局(MDA)

ペースメーカーやICDの障害報告(英語)

日本心臓ペースメーカー友の会について

難病情報センター

電波が医用電気機器に及ぼす影響について

不要電波問題対策協議会レポート NTT移動通信網株式会社 野島俊雄工学博士

メディカルトリビューン記事2002年

第17回日本心臓ペーシング・電気生理学会〜ペースメーカーに対する電磁波障害の実態〜携帯電話,盗難防止ゲート,各種医療機器で検討

MICROALERT

携帯電磁波警報器(英語)

ペースメーカーについて

札幌医科大学標本館、ペースメーカーの歴史

メディカルトリビューン記事

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万引き防止監視及び金属探知システムの植込み型心臓ペースメーカ、植込み型除細動器及び脳・脊髄電気刺激装置への影響について

厚生省医薬品等安全性情報155号(概要)、平成11年6月30日

医用機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針について

厚生労働省医薬局 医薬品・医療用具等安全性情報 No. 179 平成14年7月

ペースメーカー植え込み術を受ける患者の標準看護計画

金沢大学医学部附属病院看護部

いわゆる有病者の歯科治療 5. ペースメーカー装着患者

信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

ペースメーカーに関する医療相談

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