静脈血栓塞栓症
予防ガイドライン

 

  

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最終更新日 04/26/04

2004年日本版
肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン

肺血栓塞栓症(PE)の原因の殆どが深部静脈血栓症(DVT)であり、またPEDVTの合併症でもあることから欧米では両者を一連の病態と考え静脈血栓塞栓症(VTE)と総称することも多い。また数々の大規模臨床試験に立脚したVTE予防ガイドラインが実診療に浸透しています。

日本人に関するVTEに関する大規模臨床試験は未だ乏しく、このガイドラインを基本として各施設が各々の実情に応じた独自のマニュアルを作成し実践することを勧めています。以下はガイドラインを抜粋し、参照し易いように表をまとめ、一部改変して提示しました。利用にあたってはガイドラインをまずお読みください。

表1 リスクレベル別のVTE発生率と領域別の予防法
リスクレベル
低リスク
中リスク
高リスク
最高リスク
VTE

発生率

下腿DVT(%)
2
10-20
20-40
40-80
中枢型DVT(%)
0.4
2-4
4-8
10-20
症候性PE(%)
0.2
1-2
2-4
4-10
致死性PE(%)
0.002
0.1-0.4
0.4-1.0
0.2-5
一般的予防法

早期離床および積極的な運動

ES又はIPC

IPC又はLDUH

LDUHIPC又はLDUHES又は用量調節ヘパリン又は用量調節ワルファリン

一般外科(胸部外科を含む)手術

泌尿器科手術

60歳未満の非大手術、40歳未満の大手術

60歳以上或いは危険因子のある非大手術、40歳以上或いは危険因子がある大手術

40歳以上の癌の大手術

VTEの既往或いは血栓性素因のある大手術

産婦人科手術

30分以内の小手術

良性疾患手術(開腹、経膣、腹腔鏡)、悪性疾患で良性疾患に準じる手術、ホルモン療法中の患者に対する手術

骨盤内悪性腫瘍根治術、VTEの既往又は血栓性素因1)の良性疾患手術

VTEの既往或いは血栓性素因のある大手術

産科領域

正常分娩

帝王切開術(高リスク以外)

高齢肥満妊婦の帝王切開術、VTEの既往又は血栓性素因の経膣分娩

VTEの既往或いは血栓性素因の帝王切開術

整形外科手術

上肢の手術

骨盤・下肢手術(股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折手術を除く)

股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折手術

高リスクの手術を受ける患者に、VTEの既往、血栓性素因が存在する場合

脳神経外科手術

開頭術以外の脳神経外科手術

脳腫瘍以外の開頭術

脳腫瘍の開頭術

VTEの既往や血栓性素因のある脳腫瘍の開頭術

重度外傷、脊髄損傷、熱傷

 

 

重度外傷、運動麻痺を伴う完全又は不完全脊髄損傷

VTEの既往や血栓性素因のある高リスクの重度外傷や脊髄損傷

内科

領域

基本

リスク

肥満、喫煙歴、下肢静脈瘤、脱水、ホルモン補充療法

70歳以上の高齢、長期臥床、進行癌、中心静脈カテーテル留置、妊娠、経口避妊薬服用、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患、骨髄増殖性症候群

VTEの既往、血栓性素因、下肢麻痺、下肢ギプス固定

基本リスクと急性リスクの重積で評価

急性

リスク

人工呼吸器が不要な慢性閉塞性肺疾患の急性増悪

感染症(安静臥床を要する)、人工呼吸器が必要な慢性閉塞性肺疾患、敗血症、心筋梗塞2)、うっ血性心不全(NYHA III, IV度)3)

麻痺を伴う脳卒中4)

VTE = 静脈血栓塞栓症、DVT = 深部静脈血栓症、PE = 肺血栓塞栓症、ES = 弾性ストッキング、IPC = 間欠的空気圧迫法、LDUH = 低用量未分画ヘパリン

注釈
1) 血栓性素因とはアンチトロンビン欠損症、プロテインC欠損症,プロテインS欠損症、抗リン脂質抗体症候群等
2) 心筋梗塞で十分な歩行可能まで抗凝固療法が継続できない場合にはES又はIPC施行
3) 心不全ではIPCによる静脈還流増加が懸念されるためLDUHを選択

4) 出血性脳血管障害では理学的予防法を選択

表2 推奨するVTEの薬物的予防法
種類
施行方法
施行対象
LDUH

8時間もしくは12時間ごとに未分画ヘパリン 5,000単位を皮下注射する。脊椎麻酔や硬膜外麻酔の前後では、未分画ヘパリン 2,500単位皮下注(8時間ないし12時間毎)に減量することも考慮する。

高リスクにおいて、単独で使用する。

最高リスクでは、IPC又はESと併用する。

用量調節

未分画ヘパリン

最初に約3,500単位の未分画ヘパリンを皮下注射し、投与4時間後のAPTTが正常上限となるように、8時間毎に未分画ヘパリンを前回投与量±500単位で皮下注射する。

最高リスクにおいて、単独で使用する。

用量調節ワーファリン

ワルファリンを内服し、PT-INRが1.5〜2.5となるように調節する。

最高リスクにおいて、単独で使用する。

VTE = 静脈血栓塞栓症、LDUH = 低用量未分画ヘパリン、ES = 弾性ストッキング、IPC = 間欠的空気圧迫法、APTT=活性化部分トロンボプラスチン時間、PT-INR=プロトロンビン時間の国際標準化比