Effect of losartan compared with
captopril on mortality in patients with symptomatic heart
failure: randomised trial--the Losartan Heart Failure
Survival Study ELITE II.
Pitt B, Poole-Wilson PA, Segal R, Martinez FA,
Dickstein K, Camm AJ, Konstam MA, Riegger G, Klinger GH,
Neaton J, Sharma D, Thiyagarajan B
Division of Cardiology, University of Michigan School
of Medicine, Ann Arbor 48109-0366, USA.
b.pitt@umich.edu
Lancet 2000 May 6;355(9215):1582-7
(背景)
当初のELITE試験は、心不全が認められる高齢者にアンジオテンシンII受容体拮抗薬
(AT1拮抗薬)であるロサルタンまたはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるカプトプリルを投与し、その安全性と有効性を比較することを目的とし、試験のプライマリー・エンドポイントは腎不全の発生であった。この試験では、ロサルタンはカプトプリルよりも全死亡率を46%低下し、心臓突然死を64%減少するという所見が得られた。しかし、これらの評価項目は試験のプライマリー・エンドポイントではなく、大規模でなかった(総数n=722)。このため、これらの点をさらに評価することを目的として、ELITE
II試験が実施された。
(目的)
ロサルタン投与によって、心不全が認められる老人の全死亡率および心臓突然死が低減するかどうかを判断する。本試験のプライマリー・エンドポイントは全死亡率である。第2次エンドポイントは心臓突然死/蘇生後の心停止、全入院数、心不全による入院、心血管疾患による死亡、心筋梗塞(致死性および非致死性)である。
(方法)
試験参加基準: 年齢60歳、NYHA分類II〜IVの心不全を有する患者で、駆出率(EF)<40%、過去にACE阻害薬またはAT1拮抗薬による治療歴がないか、もしくは過去3ヵ月以内にこれらの薬剤による治療が7日未満であること。
試験計画: 無作為化による多施設比較対照二重盲験試験。被験者は3,152例。無作為化により、カプトプリル50mg1日3回投与群(n=1,574)、もしくはロサルタン50mg/日投与群(n=1,578)に割り当てた。死亡例が510例となるまで追跡調査を実施する計画としたため、追跡調査期間の平均はおよそ2年となった。追跡調査を中断した患者はわずか2例であった。
患者の特性: ELITE
II試験の被験者は良好に均等化され、両群間に有意差は認められなかった。平均年齢は71.5歳、男性の比率が高かった。駆出率の平均は両群ともに31%、大半(80%)は虚血性心不全であった。各群のおよそ1/4はβ遮断薬による治療を受けており、半数はジゴキシンによる治療を受けていた。各群の患者の90%はNYHA分類II度またはIII度の心不全であった。
(結果)
プライマリー・エンドポイント(全死亡率)に関しては、ロサルタン投与群とカプトプリル投与群との間に有意差はなく、生存曲線はほぼ同一であった。全死亡率はカプトプリル投与群で15.9%、ロサルタン投与群で17.7%であった(p=0.16)。突然死、心不全による死亡率、MI、脳卒中、または心血管疾患以外の死亡については、両群間に差は認めなかった。
被験者の分析を実施したが、β遮断薬を服用していた患者以外では、いずれの薬剤を服用したものにおいても特定のサブグループに効果に差があるということはなかった。β遮断薬を服用していた少数のサブグループでは、ロサルタン投与群よりもカプトプリル投与群で比較的優れた改善が認められた。心臓突然死や蘇生後の心停止、入院、または全死亡率と全入院数の合計については、ロサルタン投与群とカプトプリル投与群との間に差は認められなかった。コンプライアンスはロサルタンの方が大幅に優れていた。有害事象のため、かなり多数のカプトプリル投与患者の薬剤投与が中断された。
(結論)
ELITE
II試験においては、心不全が認められる患者の生存率改善という点に関して、ロサルタンがカプトプリルよりも優れているというELITE試験での仮説を確認できなかった。全死亡率、心臓突然死/蘇生後の心停止、または入院に関して、カプトプリル投与群とロサルタ
ン投与群との間に差は認められなかった。
ELITE
II試験では、ロサルタンはカプトプリルよりもコンプライアンスが大幅に高いというELITE試験の所見を確認した。
心不全を有する患者に対しては、ACE阻害薬の投与効果を裏づける大規模なデータが存在するため、ACE阻害薬が現在も第一選択である。AT1拮抗薬は、患者がACE阻害薬を許容できない場合の代替選択として検討することができよう。