入浴と循環器病

 

   

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最終更新日 10/09/02

入浴死は意外と多い!

日本人は入浴好きの国民と言われており、入浴の効用としては清潔、保温、疲労回復などの効果があります。

一方高血圧、心臓病などをお持ちの方では入浴の仕方によってはかなり危険を伴います。入浴関連の死亡事故は1年間に15,000人とも言われており、その60%が75歳以上の高齢者です。

これに加え致命的とまではいかなくとも、入浴に関連して倒れる事故は相当な数にのぼると推定されます。また季節からみると上のグラフに示すように冬期間に特に多くなる傾向があり、気温の影響も見逃せません。

入浴死の主因は心筋梗塞と脳卒中

入浴死の原因の過半数が心筋梗塞です。次に脳出血、脳梗塞と脳卒中が占めます。これらの心血管系事故の発症と密接に関連しているのは血圧の上昇による血管へのストレスや、体温の上昇により血液がかたまりやすくなり、心臓や脳の動脈に血栓を生じることが原因と言われています。

1)血圧上昇の影響

特に冬など脱衣室や浴室の温度が低い場合には寒さのため、血管が収縮して血圧が上昇しやすくなります。また高温のお風呂では熱さのため更に交感神経が緊張して血圧が上昇し脈拍が増加します。

冬はシャワーでお湯をはったり、風呂の蓋をしない、シャワーを浴室内に撒くなどにより浴室の温度を上げるようにし、また高齢者では浴室温度が低く、お湯の温度が高くなりがちな一番湯は避けましょう。

特に高血圧の方は寒冷や交感神経の緊張による血圧の上昇する割合が大きく危険です。動脈硬化を生じている血管は血圧の上昇に耐え切れず血管が破れることがあり脳出血の原因となります。

また動脈硬化で不安定な脂肪班(不安定プラークと呼ばれ血管内に出来た吹き出物のようなもの)を生じているような場合、血圧の急激な変動により不安定なプラークにストレスがかかり、プラークが破れることで2次的に血栓を形成して血管をつまらせる心筋梗塞や脳梗塞を生じる危険が高まります。

2)体温の上昇の影響

また入浴により体温が上昇すると

(1)末梢血管が拡張して、血圧が低下し、血流がゆっくりとなる。
(2)発汗により血液の濃くなる。
(3)体温が2度以上上昇すると動脈血栓の原因である血小板同士がくっつきやすくなり、血栓を生じやすくなる。
(4)出来た血栓を溶かす働きも低下することも血栓を助長する。

などの理由により心筋梗塞や脳梗塞がおきやすくなります。とくに既に動脈硬化により心臓や脳の血管が狭くなっている場合には要注意です。

実際に入浴死の際のお湯の温度を調査した報告(右図)では41℃以上での事故が多いとの傾向が明らかであり、高齢者や高血圧、心臓病の方は高温のお風呂を避け38℃から40℃で5分から7分前後の入浴が賢明です。

もちろん食直後、飲酒後は血圧が更に低下し血液の流れが悪くなりますので入浴は避けましょう。

また最近の東京消防庁の調査では高齢者の入浴死の新たな原因として体温上昇と血圧低下による一種の熱中症が意識障害の引き金になるとの報告もされていますので、湯温は低めに、入浴時間は短めが安全です。

3)水圧の影響

心不全など心臓の機能が低下した心臓病の方では、入浴による水圧の影響も見逃せません。家庭の風呂では体に500Kg前後の水圧がかかるとされており、心臓に戻る血液量が一気に増し、心臓への負荷も生じますので、みぞおちの高さの半身浴がおすすめです。寒く感じる場合は、タオルを肩にかけ冷えないようにしましょう。

心臓血管系に負担のかからない入浴方法のまとめ

 1)入浴前後にコップ一杯の水分補給。

 2)冬期間は脱衣室、浴室をよく温めておく。

 3)風呂の温度は38℃から40℃。

 4)入浴時間は5分から7分程度。

 5)半身浴が心臓に負担がかからない。

 6)浴槽から急に立ち上がるのはさける。

以上を守って快適で安全な入浴を楽しみましょう。