25,26.さて、次に私どもは腎臓の血管を直接見るという方法を、これは米国マイアミEpstein教授のところから取り入れたものです。水腎症にすることによって腎臓の血管のみが腎臓の中に残るわけですが、その血管の径あるいは圧を測ることによって、さまざまな実験を繰り返してきました。

27.この実験では圧あるいはアンジオテンシンIIの濃度を変えることによって輸入細動脈の血管系が変わる。そこに非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬を投与することによってこれらが元に戻る。すなわち腎臓の輸入細動脈ではアンジオテンシンIIと圧と二つがカルシウムの流入に関係しているということがわかったわけです。

28.一方、カルシウムイオノフォアを用いて同様の実験を検討したところ同様な結果を得ることができました (11) (12)。

29,30.さらにこれは現在の岡山大学の生理学教室、旧川崎医科大学の生理学教室におられました梶谷教授のもとで開発された方法です。この方法によってCCDカメラを用いて腎臓の糸球体を直接見る。すなわち糸球体の周りにある輸入出細動脈を直接見ることによってさまざまな実験を繰り返しました。

31,32.この研究はこの装置を用いて初めてできたものですが、表層部のネフロンおよび皮質下の髄質の輸入出細動脈に対するACE阻害薬の影響を見たものです。

若干このように変わっているのですが、これが一体どのような意味を持ってくるかということに関してはまだ少し検討を要しますが、さらに慶応のグループはこれを発展させ、いわゆる血管拡張因子というものがこれに密接に関係していることを現在明らかにしています。

33.さらにこのE4177というのは現在市販されていませんがAII受容体拮抗薬であり、AII受容体拮抗薬でも同様なことが認められたわけです (13)。 

34.さて、以上のようなことから、さまざまな腎臓における機構が血圧の調節に関係しているわけですが、私はここで一つの考え方として、世界の中心としての傍糸球体細胞という考え方を提唱しております。

35.一体どういうことかというと、よく「世界の中心」という言葉が使われたときに、それを私はさまざまな情報が入ってくる場所を指すのではないかと考えております。そういたしますと、この傍糸球体装置、すなわち傍糸球体細胞のところには全身からさまざまな情報が入ってきます。では、生体の中で作られる情報というのを考えてみますと、私はそれを物理的情報、化学的情報、生物物理的情報というふうに分けて考えております。

物理的情報とはすなわちmmHg、あるいはml/minというような量で表されるものですが、それはここでは血圧あるいは血流量という形です。すなわち血流はずり応力を介し、あるいは血圧はいわゆるtransmural pressureというものを介してここにかかってくるわけです。

一方、化学的情報は簡単に言えば、有機化学、無機化学というふうに分けられると思います。有機化学の情報としては、血液の中にはさまざまな生理活性物質、ホルモンやペプチドが含まれていますから、それらは当然ここに運ばれてきます。一方、無機化学の情報はもちろん血液の中に含まれているわけですが、それを単離した形で出てくるのは尿、髄液、関節腔液以外には生体ではありません。そうしますと尿細管のところからクロライドが重要な情報をここにもたらすということがわかっております。

一方、生物物理的情報として私は交感神経活動の情報を考えております。なぜこれが生物物理的かといいますと、神経活動はμV、あるいはfrequencyという単位で表される一方、情報伝達はノルエピネフリンを介し、それが分泌され、そして情報因子として細胞に来るわけです。

以上の化学、物理、生物物理というような情報がこの一点に集まることから、私はここを世界の中心と考えているわけです。

36.さらにここを世界の中心たらしめている由縁は、この傍糸球体細胞で産生されるレニンにあるわけです。レニンは酵素です。このさまざまな情報を受けてレニンが合成分泌されるわけですが、分泌されたレニンは酵素基質反応、すなわちレニン基質に働き、アンジオテンシンIという10個のペプチドを作り出します。このペプチドはほとんど生物活性がございません。なぜならば、これがもし生物活性を持つとすれば大変危険だからです。すなわちアンジオテンシンIIは各臓器の組織において効果を発揮するわけですから、当然のことながら内皮細胞にあるアンジオテンシン変換酵素によって活性の強いアンジオテンシンIIになるわけです。

このアンジオテンシンIIはさまざまな臓器に働くことによりさまざまな効果が生み出されます。例えば腎臓ではナトリウム貯留、あるいは血圧の上昇、あるいは副腎ではアルドステロンの合成分泌の亢進、あるいは中枢神経系では口渇の亢進、そのようなさまざま情報が再び何らかの情報伝達を介し、すなわち物理的、化学的あるいは生物物理的情報を介して、またこの傍糸球体細胞にもたらされるわけです。まさにこのように情報を発信し、情報を受け取るということから、レニン−アンジオテンシン系を私はすべての生態の情報コントロールの中心であるというふうに考えております。

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