二次性高血圧

08/31/00原稿受領
09/08/00原稿掲載
  
 
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二次性高血圧

北海道薬科大学病態生理生化学 野村憲和教授 

はじめに

 高血圧=中年以降のありふれた疾患で、我が国の人口の20%以上が罹患しているためあまり深く考えず、本態性高血圧症として機械的に処理されがちである。たしかに高血圧症の95%は原因不明の本態性高血圧症であり、それにたいする対処で済むことが確率的に言えるのかもしれない。しかし残りの5%を占める二次性高血圧症は原因が分かっており、対処の仕方が異なり、治癒するものもある。医学的処理として前者は降圧という対症療法であり、治癒しないので治療は一生涯継続しなくてはならない。後者で腎臓病によるものは生活に制限を加えた上での薬物療法となる。また内分泌疾患などによる高血圧は原則として原因の除去であり、それにより治癒する。したがって的確に二次性高血圧の患者を診断することは、患者にとって大切な訳である。

 

高血圧とは

 高血圧の定義は恣意的なもので、歴史的にはだんだんその基準が下がってきた。米国高血圧合同委員会では現在成人における高血圧は収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上であり、どちらか一方を満足すれば高血圧とする。正常血圧は収縮期血圧130mmHg以下かつ拡張期血圧85mmHg以下とし、両方を満足しなくてはならない。その間は高値正常血圧とする。初回の血圧測定値が高いから高血圧とは診断しない。1〜数週間おいて少なくとも二回以上測定して、基準を満たしたなら高血圧と診断する。ただし褐色細胞腫のように発作的に血圧上昇する疾患もあり、よく患者の話を聴いて判断しなければならない。

 

血圧上昇は様々な理由で起こる

 二次性高血圧症とは表1に示すごとく、種々の疾患による病態の結果、一症状として血圧が上昇したものである。腎疾患に伴う高血圧が圧倒的に多く、次いで内分泌疾患に伴うものが多い。様々な原因による血圧上昇でも、血圧は以下の式に集約される。

  血圧=心拍出量×末梢血管抵抗

すなわち血圧が上昇したとは、心拍出量が増えたか、末梢血管抵抗が増加した結果である。心拍出量については心臓の要因や体液量の増加により、末梢血管抵抗については血管因子・体液因子・神経因子などのそれぞれが病態により活性化した結果である。前者の増加による代表的な二次性高血圧としては甲状腺機能亢進症、後者として褐色細胞腫が挙げられる。しかし腎実質障害による高血圧の場合などは、腎機能障害による排尿障害で体液量が増加した結果、心拍出量が増えて高血圧になる。また腎機能障害によりレニン−アンギオテンシン系が刺激されて末梢血管抵抗が増加して高血圧になったりする。またこれらの寄与がそれぞれ起こり、その結果高血圧に成ることもある。すなわち同一疾患でも個人間で心拍出量と末梢血管抵抗の増加の高血圧に対する寄与が異なるし、同一個人でのその病態の変化によりそれぞれの寄与率が変化する。体液依存性高血圧か血管抵抗依存性高血圧かは、腎不全患者の治療ばかりでなくあらゆる高血圧患者の治療を考える際に重要な問題点である。血圧のコントロ−ルが十分に出来ない患者またはコントロ−ルが以前は出来ていたがコントロ−ルが十分に出来なくなった患者などは、薬の選択の際に考慮しなくてはならない点である。

 

本態性高血圧と二次性高血圧の区別

 二次性高血圧症の患者の確定診断は、入院させて検査を必要とする。二次性高血圧の可能性を示唆する一般的な状態を表2に示す。表3には高血圧患者の身体所見を取る際に、二次性高血圧という観点からの注意点をまとめた。これらの状況を伴う患者では二次性高血圧症の可能性が否定できないので、入院させ生化学的検査でスクリ−ニング後、疑われるそれぞれの疾患についてさらに精査する。

 

おわりに

 これから超高齢化社会を迎える我が国において、高齢者の高血圧はありふれた疾患という状況下で、ともするとすべて本態性高血圧としがちである。しかし高齢者でも動脈硬化による腎血管性の高血圧がある事を忘れてはならない。二次性高血圧すなわち若年者という考え方は危険である。

 

表1 代表的な2次性高血圧症

1.腎性:尿の異常(特に蛋白尿)や浮腫に注意

腎臓は水代謝に関与し循環血液量に影響を与えるばかりでなく、レニン−アンジオテンシン系を通じて血管抵抗の調節に関与している。腎血管性のものは必ずしもBUNや血中クレアチニンは上昇していないが、腎実質性はネフロンの障害により多くの症例では、それらは上昇しクレアチニンクレアランスも低下している。しかしクレアチニンクレアランスが50ml/分まで低下していないときは、血中クレアチニンは上昇してこないので注意がいる。

1)腎血管性

腎動脈狭窄症(動脈硬化性、線維筋性過形成)

2)腎実質性

糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、嚢胞腎、傍糸球体細胞腫、腎不全、糖尿病・膠原病など系統疾患による腎症

3)腎周囲性

腎周囲炎、腎周囲血腫

4)尿路性

尿管閉塞、腫瘍

2.内分泌性:其々の内分泌臓器の機能障害による

1)巨人症、末端肥大症

成長ホルモンの過剰分泌による。特異な容姿に注意。

2)甲状腺機能亢進症および低下症

甲状腺ホルモンの分泌亢進または低下による。高齢者では臨床症状がはっきりしないことがあり注意。

3)副甲状腺機能亢進症

4)原発性アルドステロン症

副腎皮質の腺腫によることが多い、アルドステロン過剰分泌による高血圧で血中カリウム濃度の低下に注意。。外科治療を基本とする、術前投薬としてスピロノラクトンを用いる。

5)クッシング症候群

副腎皮質の腺腫または過形成からの糖質ステロイドの過剰分泌による。肥満の患者には一応注意。

6)副腎皮質酵素欠損症

副腎皮質ホルモンの合成障害により11β−ハイドロキシラ−ゼ欠損症、17α−ハイドロキシラ−ゼ欠損症等がある。

7)褐色細胞腫

副腎髄質または神経節のクロム親和性細胞から発生する腫瘍で、ド−パミン・ノルアドレナリン・アドレナリンを分泌する。これらカテコ−ルアミンが血中・尿中に高いことを確認すること。高血圧の型より発作型と持続型に分けられる。(図1)10%病ともいわれ、副腎外・悪性・小児・家族内発症・両側副腎発症・多発例が全体の10%である。外科手術が基本であるが、手術前および手術不能例にはα1遮断薬を用いる。(図2

3.血管性:血管雑音に注意。血管撮影で確定診断。

大動脈炎症候群、大動脈縮窄症、結節性動脈周囲炎

4.中枢神経性:脳圧亢進状態の臨床症状に注意。

脳腫瘍、脳外傷、脳脊髄膜炎

5.妊娠中毒症およびその後遺症

 

6.薬物:常用薬物の検討

副腎皮質ホルモン、経口避妊薬、グリチルリチン、サイクロスポリン、モノアミノオキシダ−ゼ阻害薬、エリスロポエチンなど注意。

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表2 二次性高血圧を疑う手がかり

1.年令・病歴・常用薬物・身体所見・高血圧の重症度・初診外来時の検査所見

2.降圧薬を投与しても降圧程度が少ない

3.血圧がコントロ−ルされていたが上昇し始めた

4.悪性高血圧

5.急に高血圧が発症

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表3 高血圧患者診察時注意すべき身体所見

1.体形

巨人症、末端肥大症、クッシング症候群

2.心拍数

甲状腺機能亢進症および低下症、褐色細胞腫

3.血圧

左右差、上肢下肢の差:大動脈炎症候群、大動脈縮窄症、結節性動脈周囲炎

姿勢による変化(臥位、座位、立位):褐色細胞腫

4.血管雑音

(臍部の左右は必ず膜面で聴診)

腎動脈狭窄症、大動脈炎症候群、大動脈縮窄症、結節性動脈周囲炎

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bp-monitoring.jpg図1

 褐色細胞腫における発作型(上段)と持続型(下段)の観血法による24時間の動脈圧変化。発作型では発作的血圧上昇時のみ高血圧の基準に達する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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図2 手術不能例の心臓原発の褐色細胞腫。

 左上:心エコ−図。左下:経食エコ−図。右上、右下:造影剤増強法スパイラルCT。 Tは褐色細胞腫。転移もあり手術できずα1 遮断薬を用いた。

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