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心臓の筋肉への血液の供給が減ることや途絶えることを虚血といいます。狭心症と心筋梗塞の2つをまとめて虚血性心疾患と呼んでいます。 狭心症と心筋梗塞の大きな違いは、心筋が回復するかどうかで、狭心症では心筋が死なず回復するのに対して、心筋梗塞は心筋が死んでしまい回復しません。 いずれの病気も重症化すると、心臓のポンプ機能が低下する心不全や、虚血による重症の不整脈を合併して生命への危険が高まります。
冠動脈の動脈硬化が進み、血管が次第に狭くなると血液が十分送られず、需要と供給のバランスが崩れて心臓が酸素不足の状態に陥ります。これを虚血性心疾患と呼び、狭心症と心筋梗塞がその代表的なものです。 また、冠動脈の一時的なけいれん(痙攣)でも心臓は酸素不足となり、発作が起こります。 狭心症と心筋梗塞の違いですが、狭心症は酸素不足の状態が一時的で回復するのに対して、心筋梗塞は血栓などで冠動脈が完全に閉塞し、その先の血流が途絶え、心筋が壊死を起こすもので、心臓に大きな障害が残ります。 狭心症の発症には、冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による器質的狭窄と攣縮(痙攣)が、様々の程度で関与していますが、主として器質的狭窄によるものが労作狭心症、攣縮によるものが安静あるいは異型狭心症として発症します。日本人の狭心症では攣縮の関与が欧米に比し多いとされています。
狭心症では痛みの部位は明確でなく、手を胸全体にあてて痛みを表現することが多いようです。 心臓のある左側の痛みでは肩から手まで症状が出ますが、右側に症状が出現することもあり、右側だから大丈夫と考えると危険です。 1カ所だけに限定されず数カ所に現れることもあります。また、症状は,“締めつけられるような”といった漠然としたものである点が特徴です。 狭心症発作時の症状は患者さんによって異なり、非常に多彩です。それだけに心臓の病気と思わない患者さんも多く、自己判断は禁物です。 特に糖尿病の患者さんでは神経障害により痛みのない虚血発作(無痛性心筋虚血)や、心筋梗塞になっても全く痛みがなく軽い息切れ程度の症状の場合(無痛性心筋梗塞)がありますので注意が必要です。
発作の起こり方により大きく2つに分けられます。
狭心症は、どのような状況で起こったかによる誘因別の分類法にしたがえば、動作や精神的ストレスで誘発される労作狭心症と、夜中から明け方にかけた睡眠中や安静時に生じる安静狭心症に分けられます。 一方、心筋梗塞に移行する危険度からみると、初めて狭心症の発作が出現してから3週問以内の新しい狭心症(労作および安静狭心症)、それに胸痛発作の回数、強さ、持続期間が増加し発作が起こりやすくなったものは不安定狭心症と呼び、心筋梗塞に移行しやすい狭心症として臨床的にも重視されています。
心臓の筋肉が壊死を起こす場所の違いにより以下の様に分類されます。
急性心筋梗塞や重症の狭心症などでは、壊死または重症虚血の部位では心臓の収縮力が低下あるいは収縮しなくなり、範囲が広ければ心臓のポンプ作用が低下し、急性、慢性の心不全を生じます。また心筋梗塞後には下図の様に梗塞部位が薄くなり、線維化を生じ、次第に拡大し、機能低下を補うため健常の心筋肥大が起こり、更に左室全体が拡張し、難治性の心不全に至ります(左室リモデリングといわれます)。
虚血性心疾患の診断を確実にし、治療方針を決める上で以下の検査は重要です。
狭心症を診断する場合、医師は
などを中心に調べます。 狭心症と思われる患者さんが受診すると医師はまず詳しく発作が起こったときの状況を聞きます。心電図は狭心症のタイプを知るのに役立ちます。 足または腕の動脈から挿入した管(カテーテル)から冠動脈に造影剤を注入する冠動脈造影は、どこが狭窄しているのか、どの程度狭くなっているかを知るために行います。それらの検査は狭心症の診断を確実にし治療方針を立てる上で大変役立ちます。
狭心症の患者さんは日常生活が大きく制約されます。狭心症の治療の目的は、まず発作を予防し運動能力(運動耐容能)を向上させ、生活の自由度を高めることにあります。また、狭心症をきちんと治療・管理しないと突然心筋梗塞を起こし命を落とすことにもなりかねません。 心筋梗塞ヘの移行を防ぐことも治療の大きな目的です。治療は生活習慣の改善と薬物療法が基本になりますが、より積極的な治療法としてバルーン等を用いて冠動脈の狭窄部位を拡張(経皮的冠動脈介入術、PCI)したり、バイパスをつくるといった血行再建療法を実施することもあります。 1. ライフスタイルの改善 冠動脈の動脈硬化は、様々の因子が複雑に影響しあって進行します。こうした因子を危険因子あるいはリスクファクターと呼んでいます。 リスクファクターには、いろいろなものがありますが、高コレステロール血症、高血圧、喫煙は3大リスクファクターと呼ばれ、修正可能であり特に重視されています。 また、糖尿病、血中のホモシステイン濃度、肥満、ストレス、攻撃的な性格なども修正可能なリスクファクターとして重要です。その他、修正不可能なリスクファクターとしては男性、加齢、家族歴などがあります。これらの因子を持った人はライフスタイルの改善に留意し、リスクファクターを減らすよう努カする必要があります。 高コレステロール血症、高血圧、喫煙はそれぞれ単独でも虚血性心疾患のリスクファクターとして重要ですが、これらがあわさるとその危険度は相乗的に高くなることが認められています。 以下の危険率はおおよその数字です。
また米国フラミンガム心臓研究による10年間の冠動脈リスクはここをクリックすると簡単に計算できます。
2. 虚血性心疾患の薬物療法 狭心症治療薬は、発作時に使用する薬と、発作を予防する薬に大きく分けられます。
心筋梗塞急性期の主な治療薬としては胸痛を抑える鎮痛剤をはじめ、抗血栓薬、硝酸薬、心筋保護の目的でベータ遮断薬やACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、動脈硬化病巣(プラーク)を安定化させる目的でスタチン系の高脂血症薬も用いられます。場合により血栓溶解薬も使用されます。不整脈や心不全を合併する場合にはそれらの治療薬が考慮されます。 3. 血行再建療法
狭心症の症状改善のほか、心筋梗塞の急性期に冠動脈を拡張し壊死におちいる心筋を最低限にするためにも行なわれます。 循環器(内)科で手術が行なわれ、狭心症の症状改善のための手術ではふつう数日から1週間程度の入院で可能です。
冠動脈バイパス術 冠動脈の狭くなっている部分より下流の冠動脈と大動脈とをバイパス血管で結んだり、心臓の近くにある動脈の行き先を、狭くなっている部分より下流の冠動脈へ付け替えます。 冠動脈バイパス手術の主な適応としては(1)左主幹部病変、(2)三枝病変、(3)ニ枝病変で、一枝が大きな前下行枝の近位部で、経皮的冠動脈介入術が困難な部位、(4)経皮的冠動脈介入術後再狭窄を繰り返す場合、経皮的冠動脈介入術後の急性冠閉塞などが挙げられます。 バイパス血管として使用するのは自分の大伏在静脈(内くるぶしから大腿部の内側に上行する静脈、右上図)、内胸動脈(胸骨の裏を縦走する動脈、右下図)、胃大網動脈(胃の下側を走る動脈)、橈骨動脈(前腕の親指側の動脈)などが用いられます。 また従来冠動脈バイパス術は、人工心肺を回して、大動脈を遮断し、心臓を停止させ冠動脈の血流を停止して行なわれてきました。しかし最近では人工心肺を使用せずに心臓の拍動をスタビライザーという特殊な器具で押さえ込みバイパス術をする、より負担の軽いオフ・ポンプ手術も盛んに行なわれるようになりました。オフ・ポンプ手術は中枢神経系の合併症が回避でき、入院期間も短くてすむ利点があります。 心臓血管外科で手術が行なわれ合併症を生じなければ、術前術後の検査も含め、ふつう3〜4週間の入院になります。 冠動脈バイパス手術のリスクについて 以下の表に2001年時点での国内の代表的施設の平均的な冠動脈バイパス手術のリスクを示しますが、、施設間での経験値の差や、冠動脈疾患の状態や心臓機能、他の臓器の合併症の程度などにより成績が若干異なりますのであくまでも目安としてご覧下さい。
札幌厚生病院循環器科のホームページ http://www.gik.gr.jp/~skj/ |