閉塞性動脈硬化症
logomain2D215F.gif

 

   

Home

 

当科では火曜、木曜の午前と午後、水曜の午前に末梢血管の病気の診察受付をしています。

最終更新日 12/14/06

 

動脈硬化は全身の血管に起こりますが、特に閉塞性(へいそくせい)動脈硬化症の場合は腹部から下肢の動脈すなわち大動脈下部から大腿動脈の範囲によく見られる血行障害です。

動脈硬化の原因は不明ですが、高脂血症(コレステロール、中性脂肪)が最も重要な関係を持っています。他に高血圧喫煙糖尿病なども大きな因子です。閉塞性動脈硬化症は現在激増しています。

動脈硬化とは、

動脈の内腔にコレステロールやカルシウムが沈着し、動脈壁の一部が硬くなったり、狭くなって、血液が通りにくくなるものです。動脈硬化を起こしている血管は、内腔が狭くなっているため、血液がつまりやすい状態になっています。

 下肢の動脈の走行

腹部大動脈は第4腰椎のレベルで左右の総腸骨動脈に分岐します。総腸骨動脈は骨盤内で内外腸骨動脈に分岐します。

外腸骨動脈は下腹壁動脈を分岐した後、大腿動脈となり膝の直上から下腿動脈を分岐するまでは膝窩動脈と言います。

その末梢の下腿動脈は以下の3つに分かれます。

1)前脛骨動脈:下腿の前面に出て前脛骨の外側を走り足背動脈に移行します。

2)後脛骨動脈: 前脛骨の内後側を走り足底動脈に移行します。

3)腓骨動脈: 後脛骨動脈から分岐し腓骨の後ろを走行します。

足部の動脈は

足背動脈は外側、内側足根動脈、弓状動脈、背足中足動脈、背足指動脈などを分岐します。

足底動脈は外側、内側足底動脈、足底動脈弓(足背動脈の深足底枝と交通)、足底中足動脈などに分岐します。

腸骨動脈から足部の動脈

足背、足底の動脈

閉塞性動脈硬化症とは

動脈硬化が進行すると、特に足では、動脈の閉塞により足の動脈が狭くなったり(狭窄)、ふさがったり(閉塞)して、足がいつも冷たかったり、しびれたり、間歇跛行(かんけつはこう)といって歩くと下腿(ふるらはぎ)の筋肉が痛くなるなどの症状がでてきます。この様な病気を閉塞性動脈硬化症と呼んでいます。

閉塞性動脈硬化症は、全身に進行した動脈硬化のひとつであり、他の血管でも動脈硬化が進行している疑いがあります。

閉塞性動脈硬化症の症状 (Fontaine分類)

1期

しびれ・冷感

動脈硬化が原因で足の血行が悪くなり、急激な運動や連続歩行の直後などにしびれ、冷感がみられます。しかしこの段階では血行不全はそれほどひどくなく、多くの場合症状もすぐ消失し、通常は無症状です。また皮膚変化としては皮膚の、皮下脂肪の委縮、脱毛などがみられます。

2期

間歇的跛行期

symptom.gif下肢血行不全の特徴的症状です。間歇的跛行といって一定の距離を歩行した後、特定の筋肉に痛みや硬直を起こし、歩行不能になりますが、しばらく休むと再び歩けるようになります。安静時にはかろうじて血流が保たれていますが、歩行時には足へ十分な血液(酸素)が供給できなくなって起こる症状です。治療するかどうかは、患者さんの生活状況と不自由さを医師とよく話し合った上で決まります。

3期

安静時疼痛期

もっと血行が悪くなると、安静時にも血液(酸素)供給が不足し、疼痛が起こるようになります。足を少しでも下げると痛みが軽くなるので、ベットから足を下げて寝るような姿勢をとる人もいます。こうした状態になると足の潰瘍、壊死が起こりやすくなるため、必ず治療する必要があります。

4期

潰瘍、壊死期

小さな傷や圧迫を受けやすい場所、たとえば足趾(そくし)の先端部などの血流の悪いところから皮膚の壊死(えし)、潰瘍が生じます。血流が悪いために治りが悪く、患部はどんどん広がります。下手をすると、足の切断にもなりかねません。すぐに適切な治療を行う必要があります。

閉塞性動脈硬化症の合併症

動脈硬化は全身で起こる可能性があります。閉塞部位によっては、脳血管障害、虚血性心疾患などの合併症を起こす危険性があります。

1:虚血性心疾患

心臓を取りまいている動脈に動脈硬化が起こり、そのため心臓の一部に血液が十分いきわたらなくなるために起こる疾患です。症状は主に胸に強い痛みを感じます。

2:脳血管障害

脳に入り込む動脈に動脈硬化が起こり、脳の一部に血液が十分にながれなくなるために起こる病気です。言葉がうまくしゃべれなくなったり、一時的に手足が動かなくなったりします。また、一時的ですが目がみえなくなる場合があります。

閉塞性動脈硬化症の検査

1:四肢動脈拍動の触知

2:上下肢血圧測定

ABI (Ankle Brachial Pressure Index)=足関節部最高血圧/上腕動脈最高血圧

正常ABIは1.0以上で、0.9以下は閉塞性動脈硬化症の疑いとなります。ABIが0.8以上では症状がないとされ、跛行を示す場合のABIの平均値は0.6とされます。

3:CT・MRI(MRA)asomra.gif

右の図は右大腿動脈狭窄の患者さんの当科外来で行ったMRA検査結果を示します。簡単にどこの動脈が狭くなっているかが判りますね。

4:超音波ドップラー検査

5:動脈造影など

初期患者の日常生活と注意・理学療法

1:日常生活の管理

1)手足の保温に気をつける。

2)深爪などの外傷を避け、皮膚の手入れをする。

3)長時間の起立や正座、しゃがみ込んだ状態を避ける。

4)快適な温度(23から25℃)を心掛ける。

5)足の温浴(傷がない場合)、清潔を保つのも効果的です。

この様に手足の血管に負担がかからないように注意して、病状や症状が悪化しないようにしましょう。

2:食事について

1)コレステロールや脂肪分の多い食べ物は控える

2)減塩

3)標準体重を維持する

閉塞性動脈硬化症は、高血圧や糖尿病により悪化します。基礎疾患である高血圧糖尿病を治すためにも、減塩やバランスの取れた食事を心がけましょう。

3:危険因子を取り除こう

タバコは最大の危険因子です。タバコに含まれている物質の中の主にニコチンと一酸化炭素が動脈硬化を悪化させます。ですから、禁煙を必ず実行するようにしましょう。

高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満などは動脈硬化を促進します。まず、喫煙している人は禁煙を実行する事が大切です。それから、食生活を改善し、適度な運動などをして危険因子を取り除く努力をしましょう。

4:毎日歩きましょう

毎日歩行運動を続けていくと側副血行路(狭窄、閉塞動脈部位をまたぐ血管)が発達します。側副血行路が発達すると血流が改善されますので歩行運動は毎日続けるようにしましょう。寒い日は屋外で行わず、屋内で行いましょう。

歩行訓練は、軽症の人が痛みの生じる歩行距離、歩行時間を測定します。そして、歩ける距離の80%歩行するようにし、数分間痛みが取れるまで休息を取るようにします。この訓練を繰り返すことにより、側副血行路が発達し、足の血流が改善されるようになります。改善されなくて、日常生活に支障をきたす場合は、手術療法の適応も考えます。

治療

1:薬物療法

内服薬では、抗血小板薬をベースに間歇性跛行や軽傷の虚血性潰瘍例に対して血管拡張作用を有する薬剤や赤血球変形能賦活剤を併用します。注射薬は安静時疼痛や重症の虚血性潰瘍に対して、入院のうえ投与するのが原則です。

2:非観血的血行再建術

1)血管拡張術・経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty; PTA)
閉塞部が短いものには、手術をしないで血管の中に風船のついた管(カテーテル)を入れ、狭窄、閉塞部でふくらませて血管を拡張します。

2)メタリックステント

風船でふくらませた後に金属性の管を血管の中で拡張させます。

asoprestent.gif

歩行時左下肢痛を訴え当科受診された66歳男性の動脈造影。左外腸骨動脈の狭窄がみられる。

asopoststent.gif

風船療法を行ったが5ヶ月後再発したためステント術を行い、現在も歩行時疼痛は消失している。

患者様の掲載同意を得ています。

3:手術

1)血行再建術
a) 血栓内膜除去術
閉塞部が太い血管で、短い範囲の時は、血管を切開し、閉塞部の動脈硬化病変(血栓)を取り除きます。動脈切開部は狭くならないよう、患者の静脈をしようして血管を広くします。

b)動脈形成術

主動脈は閉塞しているけれども、筋肉の間を通っている細い血管は開通し、そこを通って末梢へ血流がいっている場合には、その血管を太くして血液の流れをよくします。

c)バイパス手術bypassop.gif

閉塞部が長い時は、人工血管や自分の静脈を閉塞部の中枢側と末梢側に移植し、バイパス路を作ります。もっとも多く行われる手術で、大変有効な手術です。

2)交感神経切除術

血行再建術の行えない症例や,症状がFontaine分類3期以上の場合に行われますが、皮膚への血流増加作用が強く,筋肉への血流増加作用は弱いので,間欠性跛行に対する作用は弱い。