期外収縮FAQ

 

Home

印刷用ページ

 

最終更新日 02/04/03

 

 

ネット上の医療相談で「期外収縮」に関するご質問が多いので、FAQとしてまとめてみましたので、ご質問の前に参考にされてください。また期外収縮を含む不整脈全般についての解説はここをクリックしてください

期外収縮の原因は?

期外収縮の原因には心臓の異常なペースメーカー活動による異常自動能や、正常な心臓の興奮が心臓内の異常な回路を廻ってもう一度心臓に戻ってくるブーメランのような現象すなわちリエントリー(再帰性)の2つがあります。臨床的には期外収縮や頻拍の原因の診断は心電図の詳細な分析や、心臓電気生理検査などにより診断されますが、外来で診る慢性の心室性期外収縮のほとんどはリエントリーによる期外収縮です。

正常な心室の心電図波形(☆)と交互に出現する心室性期外収縮(★)の2段脈を示します。
つまり期外収縮、頻拍、細動が生じるのは電気的に不安定になるような基質(不整脈を生じ易い細胞や回路)があるためですが、心臓に病気のない方の基質の範囲に比べて、心臓に病気のある方の基質はより広範囲であり、それだけ電気的な不安性も高いと考えられます。

またある種の薬剤や抗不整脈薬自身も新たな電気的不安定性を生じさせて不整脈を引起す作用(催不整脈作用)がある場合もあり注意が必要です。

期外収縮の種類は

期外収縮の焦点や回路がある場所によって、心房性期外収縮接合部期外収縮(房室結節近辺)、心室性期外収縮に分類されます。それぞれの3〜6連発以上を心房頻拍接合部頻拍心室頻拍と言います。

基礎心疾患すなわち心房や心室に負荷がかかると心房や心室が広範囲に電気的に不安定になるような基質(不整脈を生じ易い細胞や回路)が出来やすくなります。

心房が広範囲に電気的に不安定になると心房性期外収縮が原因となり心房頻拍心房粗動心房細動になり易くなります。また心室が広範囲に電気的に不安定になると心室性期外収縮が原因となり心室頻拍や心室細動になり易くなります。

また広範囲に電気的に不安定になると期外収縮を生じる焦点や回路が複数存在することが多くなり、多源性期外収縮も出現し易くなります。

一般に心房頻拍や、心房粗細動では房室結節にて頻拍の程度が減じられ、心室の興奮の順序は変わらないため、左右の心室の同期は損なわれないので、めまいや失神を起こすほどの心室の応答心拍数になることは比較的少なく、反対に速い心室頻拍では左右の心室の同期が損なわれるため心臓のポンプ機能も低下し易く、めまいや失神の頻度が高くなります。

期外収縮の自覚症状が様々な理由は?

期外収縮による動悸や違和感などの症状の感じ方は千差万別です。もちろん1日数個程度の期外収縮でもはっきりと脈が飛ぶなどの自覚症状が出る方もいれば、1日何万個も出現しても全く症状のない方もおられます。

心拍(鼓動)の間隔が期外収縮によりタイミングが変化したことを症状と感じる方や、期外収縮が生じた次の心臓収縮時の送血量(1回心拍出量)の変化を症状として感じる方もおられます。

更には心房性期外収縮ではふつうは心室興奮のタイミングが変化するだけで心室内の興奮の順序は変化しませんが、心室性期外収縮ではそれが起こる場所によっては心室の興奮の順序が大きく変化し、心室の収縮する方向が大きく変化して症状をおこす可能性もあります。

期外収縮の起きかたと症状との関係の説明には定説といったものはありませんが、心拍のタイミングによる心拍の不整感、動悸、違和感などの起きやすさを理解するためにできるだけ単純化して以下に図解して解説します。

以下の(1)から(6)の図で横軸は時間で、正常な心室の収縮をN、期外収縮による心室の収縮をXとすると心室に血液が充填拡張される時間は(-----)の長さで決まります。血液の充填時間に比例して1回心拍出量は大きくなり心臓の縮み方も強くなり動悸や違和感などの症状を感じやすくなります。

(1)N------N------N--X---N------N------N

NXとXNの時間が短くXでの送血量は少なく、脈の乱れや動悸を感じにくい。NNとNXNの時間がほとんど変化しない期外収縮を間入性期外収縮と言います。

(2)N------N------N--X----------N------N

NXの時間が短く脈の乱れを感じにくいが、XNの時間が長く期外収縮後の送血量は多いので動悸や違和感を感じやすい。NXNがNNの約2倍になるような期外収縮を代償性期外収縮と言い期外収縮によりNのペースメーカーがリセットされて生じます。

(3)N------N------N---X---------N------N

NXの時間がある程度長く送血量も多いので脈の乱れを感じ、かつXNの時間も長く動悸や違和感も感じやすい。

(4)N------N------N-----X-------N------N

NXの時間がNN時間に近いため脈の乱れを感じにくく、かつXN時間もNN時間に近いので症状が出にくい。

(5)-N------N------N---X---------N------N

心拍数が遅めの時はXNの時間も長く期外収縮後の送血量が多いので動悸や違和感を感じやすい。したがって安静にして脈がゆっくりしている方が症状が出易いと思います。

(6)N----N----N----N---X-----N----N----N

心拍数が速めの時はXNの時間も短く期外収縮後の送血量の変化もほとんどなく動悸や違和感を感じにくい。したがって運動中などは症状を感じずらいことが多いと思います。

期外収縮の単発や数連発程度では自覚症状の強さとあとで解説する期外収縮の危険度とはむしろ無関係のことが多いようです。

期外収縮が頻発、散発あるいは消失する理由は?

特に慢性の期外収縮は原因にかかわらず、ある時は正常な興奮と1つおき(2段脈)、あるいは2つおきに出現して(3段脈)頻発するかと思うと、1日数個程度の散発になったり、時には全く消失してしたり、日毎の出現頻度の変動(日差変動)がみられることが多いとされています。また1日の中での出現頻度の変動(日内変動)が認められこともしばしばです。

異常なペースメーカーが原因であればペースメーカーが突然働きだしたり、止まったり、あるいは正常な興奮を投げ返すブーメランが原因であれば、ブーメランが投げられなくなったり、投げられたりといった期外収縮の原因の「オン・オフ」も期外収縮の日内変動や日差変動の説明のひとつです。

しかし2段脈や3段脈など規則的な出方をしたり、短時間に刻々と出現頻度が変化することが多い慢性の期外収縮では先のオン・オフで説明するような期外収縮の焦点や回路の不安定さで説明するよりも以下に解説する「かくれ期外収縮」による頻発、散発のメカニズムが該当することも多いと考えられています。

期外収縮の出現は原因が異常自動能、あるいはリエントリーにしろ「テーブルの下の床へのボール投げ」に例えることができるかと思います。

ボールが投げられる回数は異常自動能であればそのペースメーカーの頻度で、リエントリーであれば、正常な興奮の頻度と同期してボールが投げられると考えてください。

テーブルのこちら側からテーブルの下の床に向かってボールを投げ込んで、丁度テーブルの向こう側からテーブルの高さを越えてボールが見える現象を心電図で見え、自覚症状をおこす期外収縮と思ってください。

一定の回数で投げ込んでもその時の投げ込む角度やスピードが悪ければ床に当たったボールはテーブルの裏に当たって落ちたり、勢いがなくテーブルの下に落ちてテーブルの上の向こうには姿を見せることはありません。これを心電図で見えない「かくれ期外収縮」と言う意味で不顕性とか潜在性の期外収縮と言います。

テーブルの奥行きや高さによっても違いますが、ある角度の範囲とスピードでボールを床に向かって投げるとボールはテーブルより高く跳ね上がります。これを心電図で見える期外収縮という意味で顕性の期外収縮と言います。

心筋の状態をテーブルの奥行きや高さに、期外収縮が生じる回路の状態をボールの投げる角度やスピードに例えると心電図で見える期外収縮の出現頻度は原因が何であれ一定回数でボールが投げられいて、テーブルの大きさや高さ、あるいは投げる角度やスピードによりボールの見える回数が極端に変わるのに似ています。

テーブルとボールの条件が一致し続ければボールが投げられるたびに全部テーブルの上に見えて期外収縮の2段脈ということになり頻発したことになります。逆にテーブルとボールの条件が合わなければボールが投げられても全てテーブルの上には出ないで潜伏してしまい、期外収縮は一見消失したことになります。またテーブルやボールの条件が様々な理由で変化するとたまにしかテーブルの上にボールが見えず期外収縮の散発しか起きないことになります。

更にこの例えを延長してテーブルの上に飛び出たボールの勢いが余って天井にぶつかり床と天井を往復すると期外収縮の連発(3回あるいは6回以上往復すると心室頻拍と言います)が生じたことになります。

以上の説明からちょっとしたテーブルやボールの条件が変化すると、簡単に頻発、散発、消失のサイクルが生じて期外収縮の日内変動や日差変動の原因になりうることが理解できると思います。

テーブルやボールの条件が変化を臨床的な表現に言い換えると、ボールを投げる角度は不整脈を生じる異常自動能の焦点やリエントリー回路の心筋内での位置、ボールスピードに相当するのは心筋の興奮を伝える速度である「伝導速度」、テーブルの長さや幅などに相当するのは心筋の興奮からの回復度を示す「不応期」に相当しています。期外収縮の頻度に大きな影響を与える伝導速度や不応期は心拍数、自律神経のバランス、細胞内のイオン環境や薬剤などによっても微妙に変化します。

以下にリエントリーによる心室性期外収縮の3段脈の心電図を「かくれ期外収縮」で説明できる実例を引用しました。不応期(テーブル)が2つあってちょっと複雑ですが、解説を読めばなんとなく分かると思います。

正常の心室興奮(S1)が跳ね返って期外収縮(E1)が出現し、次の正常の心室興奮(S3)は跳ね返りますが、心室の不応期(上のテーブル)に当たって「かくれ期外収縮」になります。次の正常の心室興奮(S4)は跳ね帰る際に回路の不応期(下のテーブル)に近いため角度(速度)が変わって心室の不応期(上のテーブル)に当たらずにE2の期外収縮として現れるという見事な説明です。(CHEST 72:201-206, 1977 木下の論文から改変引用)

期外収縮が良性か悪性かの判定は?

期外収縮の良性、悪性について理解していただくために期外収縮を「しゃっくり」に例えて説明します。

「しゃっくり」は呼吸筋を支配する神経(横隔膜神経)の瞬間的なけいれんによりおきるとされています。

健康な方のたまたまの「しゃっくり」と違い「しゃっくり」が頻回な方では「しゃっくり」を起こす横隔膜神経を常に電気的に不安定にさせるような胸の病気等をもっている確率が高いとされています。心臓に例えると健康な方よりも、心臓が電気的に広範囲に不安定になる病気を持っている方ほど期外収縮や頻拍の発生頻度も高く、細動になる確率も高いとされています。

でもその逆に「しゃっくり」があれば全員に重大な横隔膜神経を電気的に不安定にするような重篤な病気が隠れているとは限らないのは、健康な人でもたまには「しゃっくり」がおきることから理解いただけると思います。心臓で例えると期外収縮のある人の全員に、頻拍や細動を起こす程の心臓の広範囲の電気的な不安定さを生じるような病気がある訳ではありません。

また病気で体力が弱った方で「しゃっくり」が連発したり群発すると呼吸が障害され酸欠になったり、食べられなくなったりして消耗、衰弱し易く、事故を起こし易くなるのは想像できると思います。心血管の体力すなわち心臓ポンプ機能や血管の機能が弱い方では、期外収縮が連発する頻拍が続くと血圧が低下しやすいので失神などの心血管事故が起き易くなります。

体力の余力がある方は「しゃっくり」が連発、群発すると確かに辛く、不安になったりいらいらすることは確かですが、それだけで衰弱、消耗して倒れてしまう方はいないと思います。心血管の体力すなわち心臓ポンプ機能や血管の機能が正常の場合には期外収縮が連発する頻拍でも失神などの重篤な心血管事故がおきずらいこともお分かりいただけると思います。

したがって「しゃっくり」の良性、悪性の判定には

1)横隔膜神経の電気的不安定さを起こす基礎になる病気があるか?

2)体力に余力があるかどうか?

の2つが大切ですし、両方が重なると更に危険です。

同様に期外収縮の良性、悪性の判定には

1)心臓が広範囲に電気的不安定性を起こすような重篤な心臓の病気があるかどうか?

器質的心疾患(虚血性心疾患心筋症心筋炎弁膜症など)がある場合や遺伝的に頻拍や細動を起こし易いブルガダ症候群や先天性QT延長症候群などの場合では、期外収縮により頻拍や細動に移行し易い心臓の基質(不整脈を生じ易い細胞や回路)が広範囲であることが多く、心臓の電気的不安定性は高いと思われます。

2)心血管の体力すなわち心臓ポンプ機能や血管の機能に異常があるかどうか?

心不全などのポンプ機能が低下した方や、頻拍時に重要臓器への血流を維持する血管の機能が低下した方では失神などの重篤な症状を起こし易く大変危険です。

の2つが大切ですし、やはり両方が重なると危険度が増します。

慢性の期外収縮の良性、悪性の外来での判定のためには失神などの頻拍を疑わせる症状の有無や、期外収縮や頻拍を起こす可能性のある薬剤の服薬の有無のチェック、基礎心疾患の有無、心血管の機能異常の有無を調べるため診察や血液生化学検査に加え、期外収縮の頻度や頻拍、細動の有無を調べるためのホルター心電図と、器質的心疾患の有無を調べるための安静時および負荷心電図、胸部レントゲン写真、心エコー検査や、必要があれば心筋シンチや心プールなどのRI検査等も行なわれます。

 良性の期外収縮の治療は?

良性の期外収縮やその多少の連発があっても、ふつう生命予後に影響しないことを十分納得していただき治療しません。

もちろんアルコールやカフェインの摂りすぎや、ストレスや睡眠不足が引き金になっているようであればそれらを改善することが先決です。

それでも期外収縮による自覚症状で生活に重大な支障をきたしていれば抗不安薬、あえて使用しても致命的な副作用の少ないベータ遮断薬などの抗不整脈薬の少量の使用にとどめます。

運動負荷でも増悪しない期外収縮の場合はふつうは運動制限はしませんが、極限まで体力を消耗する可能性のあるマラソンや競泳などの競技については主治医の先生とご相談ください。

良性の期外収縮を示す多くの方が「心室頻拍や心室細動などに移行して突然死するのではないか」などの不安にかられるのですが、今までの数多くの臨床研究による証拠からは良性の期外収縮は生命予後に影響しないことが知られています。心臓の広範囲な電気的不安定性の原因となる心疾患は前の項で説明した通常の外来検査で見つかりますのでご安心下さい。