心房細動と心房粗動

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最終更新日 12/05/04

不整脈 心房細動と心房粗動

心房細動はどんな病気でしょう?刺激伝導系

正常では右の図にある洞結節(どうけっせつ)が心臓の発電所(ペースメーカー)となり普通1分間に50から100回興奮します。

電線に相当する伝導路を通り心房全体に興奮が伝わり、次に房室結節(ぼうしつけっせつ)という心房と心室の電気の伝達をするいわば中継所を経由して、心室に至ります。

以上により心臓は体に必要な脈拍数を作り、補助ポンプの役割の心房と全身に血液を送る心室が協調して無駄無く働き全身に血液を送り出しています。

心房細動とは洞結節からの正常のペースメーカーから心房の興奮が始まらず、心房の筋肉がワナワナと1分間に約300〜500回と正常の5倍以上の速さで不規則に細かくふるえ、心房の補助ポンプとしてのまとまった収縮や拡張がなくなる不整脈です。

その結果、心房から心室への血液が効率よく流れなくなり、心臓全体のポンプとしての効率が低下します。心房が毎分約300〜500回のうち何割が心室に伝わるかによって心臓全体の脈拍数は変化しますが、心室への伝わり方も不規則なので脈も不規則になります。

黄色の環がマクロリエントリー電気生理的には右図の様に、心房内の種々の場所で無秩序な興奮旋回(マクロリエントリー)が心房細動の原因と考えられています。その引き金として興奮旋回(リエントリー)による心房性期外収縮や、心房や肺静脈から発生する異常な自動能(ペースメーカー)焦点のこともあります。

心房と心室の電気的中継所である房室結節が正常ならば心臓全体の脈拍数は速くなり易く、頻脈による動悸などの症状を感じ易い頻脈性心房細動になります。房室結節の働きの低下も合併すると心房の脈拍数が間引きされ心室へ伝わる脈拍数は早くならず、単に脈が乱れた感じによる動悸のみの症状のことや、房室結節の中継(伝導)障害が強くて徐脈性心房細動となりペースメーカーが必要になることもあります。

またまれにWPW症候群を合併する特殊な場合では中継所の房室結節以外に心房と心室が特殊な経路(Kent束)で短絡していますので、心室の脈拍数が極端に早くなり、危険な心室性の不整脈になることもありますので、専門医に心電図をみてもらうことが必要になります。

 心房粗動はどんな病気でしょう?

心房細動と似た病気に心房粗動がありますが、心房細動との違いは心房のふるえ方は毎分250〜400回ですが、比較的規則的で、心房と心室の中継所である房室結節で一定の割合で電気的興奮が間引きされて、心房から2対1、3対2、3対1、4対1などの一定の比率で規則的に心室に伝えられますので頻脈でも比較的規則的になります。また体を動かしたりすると急に中継する比率が多くなり急に脈拍数があがります。

右房内で反時計周りの興奮旋回電気生理的には一番多い通常型では右図の様に、右房内で時計と反対回りの興奮旋回(マクロリエントリー)が心房粗動の原因と考えられていますが、それ以外に右房内の時計回りや左房内での興奮旋回のこともあります。その引き金として興奮旋回(リエントリー)による心房性期外収縮や、心房や肺静脈から発生する異常な自動能(ペースメーカー)焦点のこともあります。

比較的規則的なこと以外は心房細動とは同じ結果ですし、心房細動と心房粗動が同じ人におきることもしばしばみられます。

 

正常洞調律
心房細動
心房粗動

心房は毎分50〜100回の規則的な興奮

心房は毎分300〜500回の不規則な興奮

心房は毎分250〜400回の規則的な興奮

心室は規則的な心房波に1対1に対応して興奮

心室も心房細動波の何割かが伝わり不規則に興奮

心室には心房粗動波が一定の比率が伝わり比較的規則的に興奮

正常洞調律の心電図
心房細動の心電図波形
心房粗動の心電図波形

矢印は規則的な心房波、印は心房波と1対1に対応した規則的な心室の興奮

矢印は細かく不規則な心房細動波、印は不規則な心室の興奮

矢印は規則的な「のこぎりの歯」の様な心房粗動波、印はほぼ規則的な心室の興奮

 心房粗細動の原因になる病気は?

心房粗細動の原因は心臓に病気のある場合(心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋症など)や心臓以外の病気のある場合(甲状腺機能亢進症など)以外に明らかな原因のない場合も多いようです(孤立性心房細動)。

またアルコールを飲みすぎておこることもまれでありません。

心房細動は年齢とともにおきやすくなり、25歳から35歳では0.5%未満ですが、70歳を越えると5%以上の頻度でこの不整脈が見られるとされ(フラミンガム心臓研究)、決してめずらしい病気ではありません。心房粗動の頻度は心房細動に比較するとかなり少なくなります。

 どんな症状があるのでしょう?

この不整脈が発作的に起こると(発作性心房粗細動)、脈拍数が突然速くなり、しかもリズムの乱れがあるので、不整脈感や動悸を強く感じたり、発作の開始時に胸痛を感じることもあり、不安になり救急で外来にみえる方も多いようですが、元々心臓の働きが弱った人でなければ数時間程度では心不全にはなりませんのでご安心ください。

また心房粗細動が常に生じている慢性固定性心房粗細動の方の場合で頻脈でない場合は自覚症状のない場合もあります。

徐脈性心房粗細動の場合にはめまいや失神、運動耐久力低下や心不全を呈することもあります。

 合併症にはどんなことがあるのでしょう?

1)運動耐性低下や心不全

心臓に病気のある場合や、心臓に病気がなくても頻脈や徐脈のため運動耐久力が落ち、更に長期間にわたると心臓のポンプ力が弱まり、息切れや呼吸困難、足のむくみといった心不全になることがありますので、早めに病院を受診するようにしましょう。

2)血栓性脳塞栓症

特に心房細動のように心房内の血液の流れが乱れ遅くなる様な状態では血液が澱み、血栓ができやすくなり左心房でできた血栓が飛んで脳動脈がつまり脳梗塞をおこす(血栓性脳塞栓)可能性が高いので予防が必要になります。最近の統計では脳梗塞の1割から2割が心臓が原因で、その半分が心房細動によるとされています。また心房細動の方の年間脳塞栓発生率は4.5%にのぼるとも言われています。

 どんな診断検査が必要ですか?

ふつうの心電図や胸部レントゲン写真以外に、ホルター24時間心電図で不整脈発作とその頻度や、脈拍数が極端に早くなったり、遅くなったりしてはいないかどうかを調べます。

心臓超音波検査(心エコー)で不整脈の基となる心臓病の有無や、心臓の働きが弱って心房や心室が拡大していないか、心房に血栓ができていないかなどを調べます。また血栓を見つける目的で心臓のCT検査や経食道的心臓超音波検査をすることもあります。

また必要に応じ甲状腺機能検査などの血液検査も行います。

 どんな治療が必要ですか?

1)心房粗細動を洞調律に戻すリズムコントロール
2)心房粗細動時の心拍コントロール
3)脳塞栓予防のための抗凝固療法

の3つが柱になります。

また心房細動そのものの治療と合併症の予防の2つが大切ですが、心臓や他に原因のある場合はその治療も必要になります。

1)心房粗細動を洞調律に戻すリズムコントロール

心房粗細動の治療は発作性であれば心房粗細動そのものを止める抗不整脈薬か電気ショックで不整脈を止めることを試みます。

心房粗動の場合には、電極カテーテルを一時的に心房に置き高頻度刺激で発作を停止できることもあります。

また心房粗細動の原因となる焦点が検査で分かった場合には、高周波アブレーションと言って特殊なカテーテルで不整脈の原因となる心房内の焦点や心房粗動の興奮旋回の経路を電気的に焼却したり、肺静脈の焦点から左心房への伝導をブロックするため肺静脈を焼却して根治治療する方法も注目されており、心房粗動では約70%〜90%の成功率と10%強の再発率とされています。

心房細動を合併する心臓弁膜症などの外科的手術の際に心房筋の一部を迷路(メイズ)状に切開あるいは凍結して旋回興奮の経路を遮断するメイズ手術を同時に行う場合もあります。

2)心房粗細動の心拍コントロール

またリズムコントロールが困難な頻拍性の心房粗細動の場合、頻拍を抑える薬剤を使用したり、心拍数を落とすために房室結節を高周波でアブレーションし、心房から心室への脈拍の伝導比率を減じ頻拍にならない様にする方法もあります。

また房室結節の心房から心室への脈拍の伝導比率が極端に低下した徐脈性の心房粗細動ではペースメーカーを植え込み治療します。

3)リズムコントロール(洞調律化)とレートコントロール(心拍数のみ適正化)とどちらが有効?

最近の心房細動の臨床研究では抗凝固療法を含めたどちらの治療でも死亡率や心血管事故率、塞栓症、心不全、入院率や生活の質 (Quality of Life) などに関しては差がなさそうだとの治療成績もありますが、最終結論はまだ出ていません。

4)心源性脳塞栓予防のための抗凝固療法

僧帽弁膜症に伴う心房粗細動にはワーファリンによる抗凝固療法が選択されます。

非弁膜症性の慢性固定性心房細動や予防できない発作性心房細動の場合には、65歳以上で塞栓症の危険因子

  • 心不全の既往
  • 塞栓症の既往
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 左房拡大
  • 左心機能不全

のいずれか1つでも有する例に対してはワーファリンが第一選択となります。塞栓症の危険因子のない65歳以上ではアスピリンなどの抗血小板薬が使用されます。

ワーファリンの効果を確かめるためのプロトロンビン時間かトロンボテストといった血液検査を定期的に受けて頂く必要があります。プロトロンビン時間のINR値を2.0〜3.0(高齢者では1.6〜2.6)の範囲になるようワーファリンの量を加減することが勧められています。

最近の幾つかの心房細動に関する大規模臨床研究をまとめた研究では、ワーファリンが60%程度脳卒中の危険を減少させるのに対し、抗血小板薬のアスピリンは20%程度しか危険を減少させません。