|
米国のNational Cholesterol Education
Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation and
Treatment of High Blood Cholesterol In Adults (Adult
Treatment Panel III, ATP III) のQuick
Desk
Referenceを当科で日本語訳しました。
一般の方へ:
このガイドラインは米国民を対象にしたものであり、日本人の高脂血症ガイドラインではありませんのでご注意ください。
ステップ2の冠動脈疾患危険群(CHD risk
equivalent)の定義についてはQuick Desk ReferenceよりExecutive
Summaryの方が簡明なので差し替えました。
略語:
総コレステロールはT-Ch、LDLコレステロールはLDL-C、HDLコレステロールはHDL-C、中性脂肪はTGと略します。
今回の改訂の特徴をExecutive
Summaryレポートから引用
|
多重危険因子に焦点
|
- 冠動脈疾患を罹患していない糖尿病患者は、殆どが多重危険因子を有するが、冠動脈疾患危険群(CHD
risk equivalent)へレベルが上げられた。
- フラミンガムポイントスコアにより10年間の冠動脈疾患発症リスクを計算し、多重危険因子例の治療を強化。
- 多重の代謝性危険因子=代謝症候群(metabolic
syndrome)例のライフスタイル修正治療を強化。
|
|
脂質とリポプロテイン分類の変更
|
- LDL-Cは100mg/dL未満を適正とした。
- 低HDL-C血症を35mg未満から40mg未満とした。
- TGのカットポイントを下げ中等度の上昇の注意を喚起した。
|
|
管理サポート
|
- 完全なリププロテイン・プロファイル(T-Ch、LDL-C、HDL-C、TG)を初期検査として推奨
- 植物性stanols/sterolsとviscous(soluble)
fiberをLDL-C低下療法の食事療法の選択枝に加えた。
- 生活習慣修正治療と薬物治療の継続に重点
- LDL-C低下治療のみならず、200mg/dL以上の高TG血症例の治療も推奨
|
ステップ1:リポプロテインレベルの決定-
9〜12時間の空腹後のリポプロテイン・プロファイルを測定します。
ATP
IIIのLDL-C、T-Ch、HDL-Cの分類(mg/dL)
|
LDL-C-主要治療目標
|
|
<100
|
適正
|
|
100-129
|
準適正
|
|
130-159
|
境界
|
|
160-189
|
高値
|
|
≧190
|
非常に高値
|
|
T-Ch
|
|
<200
|
適正値
|
|
200-239
|
境界値
|
|
≧240
|
高値
|
|
HDL-C
|
|
<40
|
低値
|
|
≧60
|
高値
|
ステップ2:冠動脈疾患イベント発症の危険が高い臨床的な動脈硬化病変の評価:10年間の冠動脈発症リスク>20%の冠動脈疾患危険群
CHD risk equivalentとは
- 臨床的な冠動脈疾患や他の動脈硬化病変(症候性頚動脈疾患、閉塞性動脈硬化症、腹部大動脈瘤)
- 糖尿病(危険因子ではなく冠動脈疾患危険群に含まれる!)
- ステップ4で10年間の冠動脈発症リスク>20%の多重危険因子群
ステップ3:LDL-C以外の主要リスクファクターの評価
- 喫煙
- 高血圧(BP≧140/90
mmHgまたは降圧剤内服中)
- HDL-C低値(<40mg/dL)
- 冠動脈疾患早期発症の家族歴(一親等での55歳未満の男性又は65歳未満の女性)
- 年齢(男性45歳以上、女性55歳以上)
- HDL-Cが60mg/dL以上は"negative" risk
factorとしてリスクファクター数を一つ減じる
|
ステップ4:LDL-C以外に複数の危険因子があるが冠動脈疾患危険群でない場合は右のフラミンガムリスク計算プログラム(男性のスコア表、女性のスコア表)により10年間の短期冠動脈発症リスク(心筋梗塞発症や冠動脈疾患による死亡)を評価する。
|
上のボタンをクリックするとCalculatorが別ウィンドウで起動します。
|
以下の3段階の10年間のリスクに分類
- >20%-冠動脈疾患危険群
- 10-20%
- <10%
ステップ5:リスクの程度を決定
- 治療目標のLDL-C値
- ライフスタイルの修正治療(TLC
Therapeutic Lifestyle Changes)を決定
- 薬物治療の選択
|
リスク別
|
目標LDL-C
|
TLC開始LDL-C
|
薬物治療開始LDL-C
|
|
冠動脈疾患又は冠動脈疾患危険群(10年間のリスク>20%)
|
<100mg/dL
|
≧100mg/dL
|
≧130mg/dL
(100-139mg/dLで場合により薬物開始 *注1)
|
|
複数の危険因子
(10年間のリスク≦20%)
|
<130mg/dL
|
≧130mg/dL
|
10年間のリスク10-20%では
≧130mg/dL
|
|
10年間のリスク<10%では
≧160mg/dL
|
|
1個以下の危険因子 *注2
|
<160mg/dL
|
≧160mg/dL
|
≧190mg/dL
(160-189md/dLで場合により薬物治療)
|
*注1: もしTLCにてもLDL-C100mg/dL未満にならなければLDL降下薬の使用を勧める意見やTGやHDL-Cをニコチン酸やフィブラート系で治療するべきだとの意見がある。
*注2: 危険因子1個以下では10年間のリスクは殆どが10%以下になるのでフラミンガム計算表の参照は不要。
ステップ6:LDLが目標値以上なら生活習慣修正治療を開始
- 食事療法
- 飽和脂肪酸を総カロリーの7%未満、コレステロールを1日200mg未満に制限
- viscous (soluble)
fiberを1日10-25gに増量したり植物性油(stanols/sterols)を1日2g以上にしてみる
- 体重管理
- 運動療法
ステップ7:ステップ5で必要なら薬物療法を加える
- 冠動脈疾患合併例や冠動脈疾患危険群では生活習慣修正治療との併用を考慮
- それ以外では3ヶ月の生活習慣修正治療後薬物治療を考慮する
|
薬剤の分類
|
薬剤と用量
|
脂質/リポプロテインへの効果
|
副作用
|
禁忌
|
|
HMG還元酵素阻害薬
(スタチン系)
|
- Lovastatin(20-80mg), Pravastatin(20-40mg),
Simvastatin(20-80mg), Flubastatin(20-80mg),
Atorvastatin(10-80mg),
Cerivastatin(0.4-0.8mg)
|
- LDL-C 18-55%減
- HDL-C 5-15%増
- TG 7-30%減
|
横紋筋障害、肝機能障害
|
絶対:活動性、慢性肝疾患
慎重投与:併用薬
|
|
胆汁への排泄剤
|
Cholestyramine(4-16g), Colestipol(5-20g),
Colesevelam(2.6-3.8g)
|
- LDL-C 15-30%減
- HDL-C 3-5%増
- TG 不変または増加
|
消化器症状、便秘、他の薬剤の吸収阻害
|
絶対:dysbeta-lipoproteinemia、TG>400mg/dL
慎重投与:TG>200mg/dL
|
|
ニコチン酸
|
速効製剤:ニコチン酸(1.5-3g),
徐放製剤:Niaspan(1-2g), 持効製剤:(1-2g)
|
- LDL-C 5-25%減
- HDL-C 15-35%増
- TG 20-50%減
|
フラッシング、高血糖、高尿酸血症、痛風、上部消化管症状、肝障害
|
絶対:慢性肝疾患、重症の痛風
慎重投与:糖尿病、高尿酸血症、消化性潰瘍
|
|
フィブラート系
|
Gemfibrozil(600mg BID), Fenofibrate(200mg),
Clofibrate(1000mg BID)
|
- LDL-C
5-20%減(高TG血症で増加することあり)
- HDL-C 10-20%増
- TG 20-50%減
|
消化不良、胆石、横紋筋障害
|
禁忌:重症腎臓障害、重症肝障害
|
ステップ8:3ヶ月の生活習慣修正治療(TLC)の後、代謝症候群(metabolic
syndrome)があれば治療をする
危険因子のいずれか3つがあれば代謝症候群とする
|
危険因子
|
基準
|
|
腹部肥満(*注1)をウェスト径
(*注2)で測定
|
男性
|
>102cm
|
|
女性
|
>88cm
|
|
TG
|
≧150mg/dL
|
|
HDL-C
|
男性
|
<40mg/dL
|
|
女性
|
<50mg/dL
|
|
血圧
|
≧130/≧85mmHg
|
|
空腹時血糖
|
≧110mg/dL
|
*注1:肥満はインスリン抵抗性と代謝症候群を合併する。腹部肥満は肥満指数(BMI)よりも代謝上の危険因子とよく相関するのでウェストサイズを代謝症候群の体重指標として用いた。
*注2:米国男性の一部はウェストサイズがわずかのみの増加(例
94-102cm)でも多重の代謝性危険因子を有する可能性もあるが、そのような場合はインスリン抵抗性の強い遺伝的原因の可能性があるが、ライフスタイルの修正がやはり大切である。
代謝症候群の治療
- 原因治療(肥満と運動不足)
- 生活習慣修正でも続くようなら脂質と脂質以外の治療
- 高血圧
- 易血栓症是正のため冠動脈疾患例ではアスピリンを投与
- ステップ9に従い高TG血症や低HDL-C血症を治療
ステップ9: 高TG血症の治療
ATP
IIIの高TG血症の重症度(mg/dL)
|
<150
|
正常
|
|
150-199
|
境界
|
|
200-499
|
高値
|
|
≧500
|
非常に高値
|
高TG血症の治療(≧150mg/dL)
- LDL-C値の目標が主目的
- 体重管理の強化
- 運動療法の強化
- LDL-C値が目標値に達してもTG≧200mg/dLであれば2次目標をnon-HDL-C値(=T-Ch
-
HDL-C)をLDL-C目標値より30mg/dL高い値とする
リスク別のLDLコレステロール目標値とNon-HDL-C目標値
|
リスク別
|
LDL-C目標値(mg/dL)
|
Non-HDL-C目標値(mg/dL)
|
|
冠動脈疾患又は冠動脈疾患危険群(10年間のリスク>20%)
|
<100
|
<130
|
|
複数の危険因子(10年間のリスク≦20%)
|
<130
|
<160
|
|
1個以下の危険因子
|
<160
|
<190
|
- LDL-C目標値達成後TGが200-499mg/dLならnon-HDL-C目標値を達成するために薬物を追加
- LDL-C降下薬を増量するかニコチン酸またはフィブラート系をVLDLを低下させるために追加
- TGが500mg/dL以上ならまず膵炎予防のためTGを低下させる
- 超低脂肪食(総カロリーのうち脂肪は15%以下)
- 体重管理と運動療法
- フィブラート系またはニコチン酸
- TGが500mg/dL未満に低下すればLDL-C低下治療を開始
低HDL-C血症の治療(<40mg/dL)
- まずLDL-C目標値をめざす
- 体重管理と運動療法の強化
- TGが200-499mg/dLならnon-HDL-C目標値をめざす
- TG<200mg/dL(低HDL-C血症単独)で冠動脈疾患例か冠動脈疾患危険群ならニコチン酸かフィブラート系を考慮する
|